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<立松和平さん>生と死「丁寧に」新人絵本作家の長女(毎日新聞)

 「父もまさか、こんなに早く死が訪れるとは思っていなかったでしょう。やりかけの仕事がたくさんあって……」。東京都渋谷区の画家、山中桃子さん(32)は悔やむ。命をテーマにした「おばあちゃんのくりきんとん」(長崎出版刊)で昨年11月、絵本作家としてデビューした山中さん。1月に次男を出産、2月には父を亡くし、生と死に向き合った。その父は作家の立松和平さんだ。【田後真里】

 物心がついたころから絵を描くのが好きだった。父は「好きなことをやれ」といつも励ましてくれた。美大卒業後は、父の文章に挿絵を添えた。共作本は30冊を超え、03年には絵本「田んぼのいのち」などでブラチスラバ世界絵本原画展で入選した。

 「丁寧に」。これが父の口癖だった。「心を込めろという意味にとらえてきました」と山中さん。15年ほど前の思い出がよみがえる。共通の趣味だった仏教美術を見に一緒にインドに渡った。交わす言葉もなく、ただ2人で見入った。父は旅先でも、電車での移動中も「ペンさえあればできる」と執筆や取材を続けた。そんな父の後ろ姿を見つめていた。

 絵本作家は夢でもあった。デビュー作「おばあちゃんのくりきんとん」では主人公のたろうが、おばあちゃんの死に戸惑う。おばあちゃんは思い出や料理の味として心の中に生き続けていた−−。

 「よく書けているじゃないか。感動したよ」という父の言葉を思い出す。「自分が描いた『命は続いていく』という言葉の意味を今、かみしめています」

 読んでいない父の作品もたくさんある。「父の存在を以前より濃く感じる。本を読み、知らない父の一面に会える気もします」

 ◇「お花見展」28日まで

 都内では桜の満開が近い。桜をテーマにした絵画19点を集めた「山中桃子のお花見展」が28日まで、新宿区大京町のアートコンプレックス・センター(03・3341・3253)で開かれている。

 ◇東京・青山で偲ぶ会

 立松和平さんは、小説「遠雷」「道元禅師」で知られ、環境問題などにも取り組んだ作家。2月8日に多臓器不全のため62歳で死去した。宇都宮市役所に勤務後、80年、都市化にさらされる農村を舞台にした長編「遠雷」で野間文芸新人賞、97年には「毒−風聞・田中正造」で毎日出版文化賞を受賞した。

 テレビ朝日系の「ニュースステーション」のリポーターとして活躍するなど、テレビの紀行番組にも出演。パリ・ダカールラリー出場でも知られた。

 27日午後2時から、東京都港区の青山葬儀所で「立松和平さんを偲(しの)ぶ会」が行われる。

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